人との出会いが家との出合い
自由にDIYできる空間を求めて
俵町・元店舗兼住居本田香さん
JR大糸線北大町駅は小さな無人駅。周辺には大町市文化会館や大きな公園があり、閑静な住宅街が広がる。東京出身の本田香さんが借りた家は、駅から徒歩圏内の県道31号線沿い、コメリハードアンドグリーンのほど近くにある。こぢんまりとした2階建ての店舗兼住宅だ。まだ引っ越して間もないという新居の居間に通してもらい話を伺った。
「都内の広告代理店で働いていたので、いつも仕事は終電でした。20代後半になったとき、“やったことのないこと”をしてみたくなりOLを辞めて、太陽光パネル設置の仕事をしました。そのときの同僚宛にスキー場の運営を手伝って欲しいという話があり、面白そうだったので私も付いてきました。それが爺ガ岳スキー場だったんです」と移住の経緯を話してくれた。
移住当初は白馬村の知人宅に仮住まいしながら、自分の部屋を探したという。「ネットで不動産屋の物件情報や市の空き家バンクはチェックしていましたが、なかなか家賃との折り合いが付かなくて……。最初はアパートを考えていましたが、仕事の都合で朝早かったり夜に遅くに帰ってきたりするので集合住宅だと迷惑かなと。私は趣味も多く持ち物が多いので、一軒家を探すようになりました」。都会で単身女性が一軒家を探すのはイメージしにくいが、ここは大町。アパートの家賃に近い金額で戸建てを借りられるので、そんな選択肢もあるのだ。
職場の同僚の人づてで紹介されたのがこの家で、内見したその日のうちに契約した。常識の範囲で自由にDIYして良いというのが気に入ったので、即決だったという。「単身だと自分の考えですぐに決められるのがメリットです。
白馬村でなく大町市で家を探したのは「‟街“感と‟地方”感の兼ね合いが良かった」のだとか。「今の職場の爺ガ岳スキー場が近いし、近くに買い物する場所もある。ホームセンターが大好きなのではしごできるのがうれしいです。賃貸契約に仲介業者は入っておらず、火災保険は自分で契約。「店舗部分は工具とか趣味の物置になっています。仲間は台所に薪ストーブを置きたいって言ってますが、どうなることやら(笑)」と楽しそうだ。
一軒家を一人で借りて住み心地はいかがだろうか。「駐車スペースが広くてびっくりしました。庭が広いと草刈りや雪かきが大変だって最近気づきました(笑)。でも毎朝この雄大な北アルプスを眺める生活ができて、とても幸せです。
地方での家探しは難しそうだと思われがちだが、「家や仕事を探すのにネットで検索もするけど、やっぱり人との繋がりが大事ですね。行き当たりばったりの人生なのに、私は運がいいのだと思います」と本田さん。彼女はきっと運がいいばかりではないのだろう。運を自分のものにできるフットワークの軽さと適応力の高さが、彼女流の家探しのコツのようだ。