みんな場所を欲していた からっぽのハコが出来るまで(後篇)
八日町「.BASE OMACHI」管理人 屋田 翔太さん
DIYで受け継がれるストーリー
「空き家を再利用するにあたって、全部業者にお願いするとストーリーが無くなってただの空間になっちゃうので、自分達でやるDIYにこだわりました」と屋田さんは言う。
まず大変だったのは、床のナイロンクロスを剥がす作業。約150平米の床をカッターで地道に削っていった。他にも、壁のクロスを剥がすと床の隅から水漏れしていることが判明して、急きょ外からモルタルで壁を埋めるなど元空き家ならではの苦労もあった。
DIYをする上で専門的な知識があったのか尋ねると、「必要なのはひたすら根気だけ!」と意外な言葉が返ってきた。ニュアンスのある漆喰の壁に、空間を引き締める黒い天井、太い鉄骨を木材で囲いアクセントにした柱、その柱と統一感を出すために自作したテーブル。おしゃれな空間に仕上 がっているが、実は材料は全て地元ホームセンターで調達した。
「きれいにし過ぎると汚しちゃいけない感じがしちゃうので、あえてラフに塗ったりと雑な感じも残しました。入り口の扉は昔からよくある丸い鉄の取手だったんですけど、それを外して木に替えたら空間が締まりましたね」と、こだわり尽くしたポイントを教えてくれた。
リノベーションにかかった時間はおよそ2週間、朝から晩まで全ての時間を費やした。
どんどん広がるハコの活用法
コンセプトは「ありとあらゆることに使えるハコ。町の拠点としてミーティングやプレゼンにも使えるように。1時間もあれば椅子やテーブルなどあるものは全て裏にしまえて、からっぽな状態にも なる」とのこと。ネット環境はFree Wifiを提供、壁にはコンセントと一緒にUSBの差込口まで備わっている。またアウトドア用の椅子などは簡単に折りたためて、持ち運べば外でも使えるので防災対策にもなる。いろんな会を開催していく中で、DVDプレイヤーやホワイドボード、鏡やラックなど、これあった方がいいよね、というものを増やしていった。
「やってみて自分達もびっくりしたのが、思いのほかみんな場所を欲していたんだ!ってことですね」高校生の自習スペースに、ママ達のヨガ教室、スポーツの情報交換会や、ポップアップストアなど、知り合いの紹介でどんどんその活用法が広まってきている。
大町の空き家とこれから
屋田さんは、「ここだけで終わらず、これから会社として大町の空き家を全力で埋めていくつもり」だという。「ゼロから新築すると空き家は増えていく一方だし、周りとのバランスも悪くなる。既存の建物を再生して、まずは外観にはこだわらず中身をしっかり作っていく。メインストリートに行きたいお店が増えれば人通りがまた戻ってくるはず。そうしたらここに花を置こうかなとか、自然な流れで外も綺麗になっていくんじゃないかな」そんな素敵なビジョンを思い描いている。
最後に、これから空き家を活用して何かやりたい人に向けてアドバイスを尋ねてみた。「まずは思い立ったら、やる。やればそれなりに成果は出る」と屋田さんは言う。「一歩踏み出すか踏み出さないか。元気に動いていると手伝ってくれる人、助けてくれる人がいっぱい居るし、自分達もそのつもり。お互い一緒になって集客していければ」と心強い言葉を頂いた。これから大町で何かチャレンジしてみたいなら、まずは気軽に .BASE OMACHIの扉を開いてみてはどうだろうか。