みんな場所を欲していた からっぽのハコが出来るまで(前篇)
八日町「.BASE OMACHI」管理人 屋田 翔太さん
大町のニューウェーブ
旧ミヤハラ電器を改装したユニークな貸しスペース .BASE OMACHI(ドットベース大町)管理人で、 株式会社フリーフロート 代表取締役の屋田翔太さんにお話を伺った。
「作業しながらですみません。明日30本納品なんで」そう言いながら手際良く工具でスキー板にビ ンディングを取り付ける穴を開けていく。「何してる人なの?ってよく聞かれるけど、こんな地道な作業が本業です」ニカッとした人当たりの良い笑顔が印象的だ。
白馬村出身で幼少期からスキーやスノーボードをしてきた屋田さんは、スノーボードナショナルチームに所属しワールドカップなどに出場した経歴の持ち主。現在は株式会社フリーフロートで輸 入事業、WEBサイト制作事業、動画撮影、写真撮影などを行っている。
”空き家の学校”との出会い
「大町に興味を持ったきっかけは、やっぱり家族ができたから」子育てしやすい環境を重視し、 2019年に一家で大町に移住してきた。同時に、日の出町の旧パチンコ店をDIY施工したイベントスペース、いっしあーとすぺーすに会社の事務所を借りた。「そことは別に自分達の公開スペースと して、お客さんが来た時に受け入れられる場所が欲しかったんです」と屋田さんは言う。そんな 時、事務所の大家さんであり地域の何でも屋さんとしても活動する今井伸悟さんから”空き家の学校” を紹介された。
”空き家の学校”とは、空き家を地域の資源としてまちづくりに生かしていこうという大町市・東京大 学・信州大学の共同研究事業だ。2018年から”まちづかいチャレンジ”として空き家を活用した様々なイベントが行われていた。さらに一過性のものではなく持続可能な取り組みにしていくために、 2019年には”信濃大町まち守舎”が発足。団体として空き家を活用して何かやってみたい人を必要としていた。それが屋田さんの想いと上手くマッチングした形だ。
自分達の手でからっぽの空間へ
「いくつか候補の空き家を見て回って、立地・スペース的にちょうど良いのがここでした。初めは僕の方から、使いたいかもと宮原さんに相談しました。外から来た初対面の人間にそう言われて最初は半信半疑だったと思いますよ」と屋田さんは当時を振り返る。
2019年の5月にはフリーフロート側からまち守舎と宮原さんに向けたプレゼンを行った。宮原さんがそれを受け、こいつら本気だなと感じていたことを伝えると、「普段は宮原さんからそういうこと聞く機会ないからね〜」とフリーフロートのメンバーは嬉しそうに話す。
その後、正式に賃貸契約を結ぶこととなった。契約の際に、下水やトイレなど自分達で直すので建物としての価値は上がるが、出ていく時に原状回復はしない(全部置いていく)という条件で合意。そして10月から片付けとDIYでのリノベーションに取り掛かった。
まずはからっぽの空間にするために、まち守舎のメンバーと関係者・地域住民・学生など総勢15~20人が集まった。何十年もの間、蓄積していたものすごい量の物をリサイクルするもの・捨てるものに仕分けしていくところからスタート。「ここからどんな風になるのか、みんな全く想像ついてなかったと 思いますよ」(つづく)